第14回アレルギー週間記念講演会



開始時刻前にもかかわらず、もう席についている皆さん。
講演中の写真は自粛しました。

主催:財団法人日本アレルギー協会九州支部

日時  平成20年2月24日(日) 13:00〜16:30
会場  天神ビル11F 10号会議室

テーマ 花粉症と鼻のアレルギー
     アレルギーのウソ、ホント?

マネージメント 
西間 三馨 先生(日本アレルギー協会九州支部長・国立病院機構福岡病院長)
    
第一部 花粉症と鼻のアレルギー
     「司会」 石川 哮 先生(日本アレルギー協会常任理事・熊本大学名誉教授)
講師 
   「今年の花粉飛散状況と花粉状況」
    岸川 禮子 先生(国立病院機構福岡病院アレルギー科医長)

   「よくわかる花粉症・アレルギー性鼻炎」
    黒野 祐一  先生(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科耳鼻咽喉科教授)

第二部 アレルギーのウソ、ホント?
     「司会」 西間 三馨 先生

講師
   「喘息」
    庄司 俊輔 先生(国立病院機構福岡病院副院長)

   「ストレスによるアレルギー」
    久保 千春 先生(九州大学大学院医学研究院・医学部心療内科教授)

   「アトピー性皮膚炎」
    古江 増隆 先生(九州大学大学院医学研究院・医学部皮膚科教授)

   「食物アレルギー」
    柴田 瑠美子 先生(国立病院機構福岡病院小児科部長)


 《若大将からこのレポートに関して一言》

  このシンポジウムは、アレルギーに悩む一般の皆さんに正しい知識を身に付けて欲しいと
  アレルギー専門医の先生方から、ボランティアで開催していただいております。

  というのも、アレルギーに関しては特に、医師と本人や家族が協力し合って治療していかなければ
  十分な成果が上がらないものだからです。

  そういう意味でも、「このような会に参加できない方々にも皆さんから教えてあげて下さい。
  また、教えられるようにしっかり聞いて下さいね。」と西間先生も以前からおっしゃっておられました。

  という訳で、私は、このサイトを通じて皆さんに少しでもお役に立てればと考えております。

  毎年レポートを書いておりますので(多少重複することはありますが)、今回は、以前に書いていない
  内容や印象に残った部分だけを
私の言葉でレポートしています。

                          日本アレルギー協会 一般会員 須崎弘己

 西間 三馨 先生

全国的にも有名なアレルギーの権威で、その話しぶりはユーモアもあり、私たちにも分かりやすく解説して頂ける素晴らしい先生です。

開会のご挨拶の後、早速、各先生の講演に入りました。
今年も、アレルギー専門医の有名な先生方で、このような会でなければ、滅多にお会いできないほどの豪華メンバーです。


 「今年の花粉飛散状況と花粉状況」  岸川禮子 先生

今年の花粉飛散予測は、福岡は少なめなのですが全国的には多いと予測されているそうです。ご存知のように、気温の変化に左右されますので、2月に入って寒い日が続いていた頃には飛散も抑えられていたのですが、気温がだんだん高くなってくると沢山飛び始めることになります。また、雨の日も花粉飛散はかなり少なくなります。

基本的に花粉を避けるのが1番の方法ですが、花粉情報も「リアルタイム花粉モニター」という機械が導入されつつあり、将来は、気温が街角の電光掲示板に表示されるように、現在の花粉状況が表示されるシステムが普及されるかも?ということでした。

その時間の花粉飛散状況により、帽子、マスク、コート、メガネなどの防御服を考えて外出するといった事が出来るようになれば便利ですよね。

もちろん、現在でも花粉情報はインターネットで見ることが出来ますので、出来るだけ近い場所の花粉状況に対応するといったことが必要でしょう。

また、花粉症は女性に多いそうで、「女性は辛抱力が無いということではなく本当なんですよ(^^ゞ」とおっしゃっていました。男の方が仕事で外に出ることが多いので男性の方が多そうですが、女性に花粉症が多いというのは、ホルモンの関係らしいです。

ですから、ご主人がお家にいらっしゃる奥さんに「うちの中に居るのに花粉症がひどいことはないだろう!」な〜んて、愛のないことを言ってらダメなようですぞ(^^)v←これは先生の言葉じゃないですよ(^^ゞ

ともかく、花粉症は命にかかわるものではありませんが、生活の質が落ちることが大問題で、ひどい人は、目鼻、くしゃみだけではなくもっと広い範囲にまで及ぶため、やはり、この時期は特に、要注意ですね(^_-)-☆

花粉の飛散状況をリアルタイムで確認できる環境省花粉観測システム
愛称「はなこさん」http://kafun.taiki.go.jp/ は(地域は限定されますが)、参考になると思います。

また、皆さんの地域にも花粉の飛散状況を公開しているサイトがあります。県名+花粉状況等でキーワード検索すると見つけられますよ。


 「よくわかる花粉症・アレルギー性鼻炎」   黒野 祐一  先生

花粉症のメカニズム等について非常に分かりやすくご説明いただいて皆さん好評でした。
これは割愛させて頂くとして、花粉症も低年齢化し、特に学校の成績が花粉症のない子供に比べると集中力が落ちることにより比較的悪くなるという点が印象的でした。もちろん、薬の関係もあるのですが、いわゆるボーッとしてしまうらしいです。でも、これも専門医によれば、少しは解消できるらしいので、やはり病院に相談されるのが良いかも。

また、最近よく聞くレーザー手術も、早い話が、粘膜を焼く治療ということですので、そこまで画期的な最新治療というわけでもなく、やった方が良いかなどは症状により医師に相談したがよさそうです。要するに焼いて鈍化させるということですね。

そして、鼻づまりということで言えば、鼻中隔湾曲症のケースもあるので、市販の点鼻薬を使っても解消しないと悩んでいる方は、是非病院へ。

さらに、市販の点鼻薬を多用しすぎると薬物性鼻炎という逆効果になる場合もあるそうです。また、「くしゃみ、鼻水の症状」と「鼻づまり」の薬は違うそうですので、素人判断で市販の薬を買うのも問題ありそうです。

そうそう、お薬で眠気が来るとマズイ職業の方も、第二世代のお薬は眠くならないそうですよ。とにかく、自分の症状が、どんな症状なのか?どの段階なのか?を医師と相談して自分に合ったお薬を決めることが最も大事だということでした。

一方、サプリメントも多数市販されていますよね。
この点にも触れて頂きましたが、ちゃんとしたメーカーの商品でも効果的には、あっても1〜3割くらいらしく、病院のお薬が7割以上の効果と比べると、やはり・・・

でも、これを飲んでいると緩和される!という暗示効果はありそうです。


 「喘息」  庄司 俊輔 先生 

気道のリモデリングの権威のこの先生は、当初から毎年講演して頂いていますが、東京へ行かれるそうで、福岡では今年が最後だそうです。残念ですが栄転なら仕方がないです。

昨年までのレポートにも毎回登場していますが、とにかく、この先生が強調されるのは、炎症により気道が狭くなってしまう喘息にとって、発作時などは治療薬として気管支拡張剤。そして、平時は、炎症を抑える為の予防薬「ステロイド吸入薬」を勧められています。

そして、「アレルギーのウソ、ホント?」から言えば、ステロイドは副作用が心配なのか?ということに関しては、副作用が心配なのは事実だから安全かと聞かれれば「NO」 !  ですが、喘息の予防薬としてのステロイド吸入薬は、安全(副作用なしと言っていい)だから、医師の指導のもとにきちんと使用すればベストの薬だということです。

ですが同時に、月に1回発作があるかどうかくらいの軽度であれば、そこまで必要ない場合もあるから専門医に相談するのが1番ですね。

以下、アレルギーのウソ、ホントで言えば…
●喘息は一生治らないかと言えば、答えは、半々。
 完治という言葉は使わず、普通の生活が問題なく出来るようになった!状態を治っている状態という感じ。

●小児喘息は大きくなったら治るのか?答えは半々。
 治るケースもあるが大人になって再発するケースもあるし、大人になってから症状が出たりすることも・・・

●薬は一生飲まなければいけないのか?答えは半々。
 やはり、医師の指導を仰ぐべきで、自己判断で多く飲んだり、やめたりは厳禁。

●妊娠中は薬はやめた方が良いのか?答えは、やめるべきとは言えない。
 もちろん医師の指導に従うべきですが、お薬を止めて発作が起きた時、むしろ胎児に悪影響があるので、その方が心配なのだそうです。喘息用の薬は、それほど心配無い物が多く、医師の指導を仰ぐべきのようです。

庄司先生、お元気で、ご活躍ください。


「ストレスによるアレルギー」  久保 千春 先生

心が不安定な方のアレルギー症状を例に挙げて詳しく説明して頂きました。
具体的な患者例に、未知の部分を勉強した感じでした。

ちょっと、複雑ですので割愛しますが、アレルギーのウソ、ホントから言えば、ストレスがアレルギーの要因になるケースは確かにあるということです。

引っ越したり職場が変わったり、環境が変わったり・・・
ダニ、ハウスダストのアレルゲンのようにストレスもアレルゲンになりうるということでした。


「アトピー性皮膚炎」    古江 増隆 先生

アレルギーのウソ、ホント?に対して端的にご説明いただきました。

●遺伝する? 答えは、YESに近い

一卵性双生児でのデータがあるそうで、別々の環境で育った二人において、一人がアトピーである場合、もう一人がアトピーである確率は78%だそうです。全く同じDNAの場合ですからね。

また、二卵性双生児の場合では、25%の確率で、これは兄弟と同じということになります。

さらに、両親ともアトピーでない場合、子供に遺伝する確率は、10%。
片方の親が、アトピーの場合、子供に遺伝する確率は、25〜30%。
両親ともアトピーの場合、子供に遺伝する確率は、40〜60%と高くなるそうです。

一方、両親とも重度のアトピーであっても、必ず子供が重度のアトピーになるかと言えば、そうでない例も多いとのことでした。

●ステロイド薬を日本人は使う量が多いか? 答えは「NO」

日本人の塗り方は、むしろ少ないそうです。私たちが貰うのは5g入りのチューブですが、外国の物は、50gや100gという物が多く歯磨きのチューブのようなものらしいのです。

下の絵は、この会場で頂いたパンフレットに掲載されていたものです。


これでわかるように、結構な量を塗ることになります。実は、これくらい塗る必要があるそうで、1本の5gのチューブを使い切るのに2週間も1ヶ月もかかるというのは、(もちろん塗る面積によりますが)あまりにも量が少なく、他の病気で病院から貰った1日分のお薬を1ヶ月くらいかけて飲むような物で、効果が無いそうです。

私にも経験があるのですが、ステロイド剤を塗ってあげている時、使いすぎないようにと少なめに使っていたことを思い出します。

●保湿は必要か? 答えはYES 
これは間違いなく医学的に証明されているとのことです。
また、保湿薬には、ベトベト系からサラサラ系まであり、症状により(個人差により)医師と相談して自分に合ったものを選ぶと良いらしいです。

●プロトピックは大丈夫? 答えはYES
主に顔に使われることが多いプロトピックに関して興味がある方も多いでしょう。
そこで私が質問したところによると、比較的新しい薬ですので、副作用等が心配されていた部分もありましたが、ほとんど心配無いことが分かってきたようです。

ただし、この薬は皮膚刺激があり(ひりひり)することがあるのですが、問題なく、続けて欲しいとのことでした。このひりひり感については、ほとんどの方がひりひりされるそうで、40人から60人に一人くらいは、どうしても、このひりひりに耐えられないという方はいらっしゃるそうです。

しかし、続けても問題なさそうで、ひりひりを緩和する為に、少量の使用にとどめる。。や、
すり込まずにポイントに付けるだけ等‥試してみて下さいとのことでした。

この薬は特に顔などにつけることが出来て効果が大きい素晴らしい薬ですので、ひりひり感は我慢して使った方がよさそうですよ。



「食物アレルギー」    柴田 瑠美子 先生

まず、食物アレルギーは、個人差で様々なパターンがあるのでまとめにくいということで、素人判断ではなく、必ず医師の指導を仰がなければいけないことは言うまでもありません。

最悪、アナフラキシーショックで死にいたることもあるので本当に要注意です。
素人判断は厳禁ですね。

特に最近は、反応してしまう食物が多種にわたる傾向にあるため、必ず病院で、何に反応するのかを調べて貰うことが大事です。

しかし、ほとんどの場合が乳幼児の頃に多く、治っていくパターンが多いので、1年後に、再検査をして、その食物に対してまだ反応があるのか?ないのか?も調べて、食べられるものは食べていくという具合にしないと食べられるものが少なくなり、バランスが良い食生活が得られません。

一方、大人になって新たな食物アレルギーが出るケースも多く、やはり病院へ。

ところで、赤ちゃんの離乳食をいつから始めるか?という質問も出ました。
あまり早くから始めるとアトピーになりやすいという話が多いから出た質問です。

答えは、生後半年くらいから始めるのが良いそうで、心配な場合は、お米関係などから始めていくと良いということでした。

ところで、食物アレルギーの代表的なものとして、たまご、乳製品、小麦などが挙げられますが、ピーナッツ、ナッツ類、そばについては最近要注意対象だそうです。他にも色々ありますので、やはり病院で調べて貰うことを絶対お勧めします。



 私なりのまとめ

九州にはアレルギー専門医の中でも有名な権威が多く、その中でもトップクラスの先生方からお話を聞くと説得力もあるし、疑問もすっきり解決します。アレルギーに関しては、様々な違った情報が飛び交うことも多く、私たちは、何が正しいのか?迷うことが多いです。

そういう意味でも、今回のように、「アレルギーのウソ、ホント?」という分かりやすいお話は、考え方が決まって大変参考になりました。

西間先生も、来年も、このテーマで・・・とおっしゃってくれました。
福岡に来れる方は乞うご期待です。


会場の先生方のように素晴らしい医師に出会えればいいのですが・・・

日本アレルギー協会は、全国組織です。
ホームページもあります。

ご自分にあった(その症状に詳しい)病院や医師を紹介して頂けるかもしれません。


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